歯周病
歯周病の動画
歯周病は、早めにプラークや歯石を取ることにより簡単に治せる病気です。
歯周病について
健康な歯 歯と歯周組織
歯を歯周組織が支えています。硬いものを噛むためには、丈夫な歯と歯周組織の2つがなくてはなりません。
そこで、歯周病とは?
歯周病とは、歯周組織の病気です。プラーク、歯石の長期的な付着によって歯周組織が融解していく病気です。30才以上の日本人の7割が歯周病といわれています。抜歯の6割以上は、歯周病で抜きます。また、最新の論文によると、歯周病は糖尿病や癌、脳卒中などの全身疾患を引き起こすこともわかってきています。(ちなみに、歯周病は専門的な分類すると特殊なものもいくつかあるのですが、このHPでいう歯周病とは一般的な成人性歯周病を指します。)
英語で、プラークは、正確に「デンタルプラーク」といい、日本語でいう歯垢(しこう)のことです。歯に着く黄色の柔らかい垢です。歯ブラシでの除去が可能です。歯垢染色液で赤く染まることでご存知の方も多いと思います。
プラークと食べかすとは全く違います。
食べかすは、食べ物の断片ですから、たとえば、ビスケットを食べた後は、ビスケットの断片が歯につきます。
しかし、プラークはこういった食べかすとは異なり、細菌の塊です。初めは、少数の細菌から始まり、口腔内の栄養を使って、数時間のうちに細菌が爆発的に増加した塊です。ですから、誤解を招きやすい歯垢という言い方はあまり適切な表現ではないかもしれません。
食べかすは、食べ物の断片ですから、たとえば、ビスケットを食べた後は、ビスケットの断片が歯につきます。
しかし、プラークはこういった食べかすとは異なり、細菌の塊です。初めは、少数の細菌から始まり、口腔内の栄養を使って、数時間のうちに細菌が爆発的に増加した塊です。ですから、誤解を招きやすい歯垢という言い方はあまり適切な表現ではないかもしれません。
近年では、プラークをバイオフィルムと表現します。バイオフィルムの研究が進むにつれ、バイオフィルムの中で細菌たちの生き残りをかけた高度な知恵に人間は驚かされます。細菌は1匹では弱いので、ばらばらにならないように、ねばねばのタンパクを産出して、歯にくっつき、お互いに助け合い、超高密度の集合体を作ります。さながら頑丈な城です。この城には、栄養を運ぶ通路があり、数時間で爆発的に仲間を増やす仕組みがあります。薬剤に抵抗するバリアを作り、成熟すると虫歯を作る酸を産出したり、歯周病を作る内毒素を産出したりできるように進化までしていくのです。遺伝子の交配も行い新種の細菌まで作ったりします。研究者によっては「小宇宙」という表現をするほど深い世界なんです。
歯石
英語では、タータといいますが、あまりなじみがないですね。プラークが唾液の中の石灰成分を吸いこんで、石灰化して固まったものです。プラークを2週間ほど放置しておくと自然にできてきて、2カ月もするとカッチカチの硬い歯石になります。
硬いので、歯ブラシでは除去できません。
硬いので、歯ブラシでは除去できません。
歯周病の進行の様子
歯周病は10〜30年くらいかけてゆっくり進む病気です。あまりにゆっくりのため、痛みや腫れといった自覚症状がでることは、歯周病の末期で、もう抜く以外に治らない状態になってからが多く、サイレントディジィーズ(静かな病気)と言われています。
歯周病のはじまり
歯肉溝とは、歯と歯肉との境目にある深さ1〜2mmの溝のことで、全ての歯は、歯の周り一周、歯肉溝が存在します。
この歯肉溝にプラークが溜まり、長期間放置しておくと、プラークが内毒素という組織を溶かす溶解毒を出すようになります。
すると、歯肉溝が徐々に深くなり、病的な深さ4mm以上なると歯周ポケットと呼ぶようになります。
この歯肉溝にプラークが溜まり、長期間放置しておくと、プラークが内毒素という組織を溶かす溶解毒を出すようになります。
すると、歯肉溝が徐々に深くなり、病的な深さ4mm以上なると歯周ポケットと呼ぶようになります。
逆にいえば
歯肉溝からはじまる病気なので、歯肉溝にプラークさえ溜めなければ、歯周病は絶対に起こりえないということになります。
しかし、この状態での自覚症状は全くありません。ですから、定期的に歯の検診に来ていただくことが大切なのです。
しかし、この状態での自覚症状は全くありません。ですから、定期的に歯の検診に来ていただくことが大切なのです。
それでは引き続き、歯肉溝がプラークによって深くなっていく様子を見ていきましょう。
@ 歯肉炎
歯肉炎とは、歯周病の症状の1つで歯肉の炎症のみを指す用語です。
歯周病は、この先進行が進むと、骨や靱帯を溶かしていきます。
歯肉炎 + 骨、靭帯の融解 = 歯周病
ということになります。
歯肉溝から始まる歯周病は、まず歯肉溝周囲の歯肉を腫らす歯肉炎という症状から始まります。
「最近、歯ブラシをすると血が出る」といった症状ぐらいしか歯肉炎の兆候を感じることはできません。
歯周病は、この先進行が進むと、骨や靱帯を溶かしていきます。
歯肉炎 + 骨、靭帯の融解 = 歯周病
ということになります。
歯肉溝から始まる歯周病は、まず歯肉溝周囲の歯肉を腫らす歯肉炎という症状から始まります。
「最近、歯ブラシをすると血が出る」といった症状ぐらいしか歯肉炎の兆候を感じることはできません。
下の2枚の写真、Aが健康な方の歯肉でBが歯肉炎の方の歯肉です。見比べると、その違いはよくわかりますが、逆に見比べないと、Bの方も多少磨き残しがあるねで終わってしまうのです。事実、Bの方は当院の患者さんで虫歯を主訴に来院された方です。Bのように腫れて痛そうに見える歯肉炎でも自覚症状は全くないのです。虫歯治療が終わったあとで「最近なんだか歯ブラシの時に血が出るんだよね。」と患者さんの方から質問がありましたので歯肉炎の説明をして2カ月ほど治療したら治りました。口腔内に興味が出たとのことでホワイトニングもやられました。
こんなことが続いたら、ご相談下さい。
虫歯と違って、すぐでなくても構いません。
2〜3ヶ月様子を見ても、歯周病は簡単には進みませんから。
虫歯と違って、すぐでなくても構いません。
2〜3ヶ月様子を見ても、歯周病は簡単には進みませんから。
A 軽度な歯周病
プラークは、細菌の塊ですから、正に生きています。細菌たちは、子孫を増やすため、安全な環境を手に入れるために、より深いところに入り込んでいきます。上は歯石がガードしているため、天敵の歯ブラシは来ません。数年かけてゆっくりと進行していくのです。
B 中等度の歯周病
Aから数年後、細菌たちは、さらに奥に勢力を拡大しています。歯の周りの骨もだいぶ溶けてきました。
この時点でも、自覚症状は少なく、
「たまに歯肉が腫れるけど、ほっとくと治るので・・・。」という感じです。
この時点でも、自覚症状は少なく、
「たまに歯肉が腫れるけど、ほっとくと治るので・・・。」という感じです。
C 重度の歯周病
Bから数年後、細菌たちは、さらに奥に勢力を拡大してします。ここまで来るには、はじめの歯肉炎から20年近くの時間がかかります。歯の周りの骨もだいぶ溶けてきました。歯と繋がっている骨は、かなり少なくなってきたので、歯はぐらぐらしてきました。歯肉から膿も出ます。さすがに自覚症状はあり、ようやく歯科医院を訪れるようになります。
「最近歯がぐらぐらしてきて・・・。あんまり痛いことはないけど、痛くなる前に早めに来たよ。」
いや、実は・・・。早くないんです。
もう遅いんです!
「最近歯がぐらぐらしてきて・・・。あんまり痛いことはないけど、痛くなる前に早めに来たよ。」
いや、実は・・・。早くないんです。
もう遅いんです!
歯周病は治らないと思われている方へ
歯周病は治らないというイメージをお持ちの方が多いのですが、理由は、歯がぐらついてきて歯医者に行ったら「歯周病ですね。歯を抜かなければいけませんね。」と言われて歯を抜いている方が多いからです。歯周病は、20年近くもかけて進行する病気ですが、自覚症状が出てくるのは、治らない重症度になってからです。逆にいえば中等度までは治せますので、それまでに来ていただきたいのです。自覚症状がないのではどうしようもないのじゃないか・・・という声が聞こえてきそうですが。ですから、定期的な歯の検診に来ていただきたいのです。
歯周病の術前検査
ポケット検査から始まります
ポケットプローブ
左の器具は、ポケットプローブという器具です。歯周病かどうかの判断と進行具合は、この器具で判断していきます。この器具の先端には目盛が1mm単位でついています。
このポケットプローブで、歯肉溝の深さを測定し、mm単位で深さを記録していきます。歯1本につき6点の計測点の深さを計測していきます。
例えば、左上の6番という歯の6点の計測点は●で示した場所です。それぞれの計測点をポケットプローブで
3mm、4mm、2mm、2mm、2mm、3mmという感じで測定していきます。
3mm、4mm、2mm、2mm、2mm、3mmという感じで測定していきます。
すると、こんな感じのポケット検査値がでます。
(6点のうちいちばん深い1点のみ記録していく場合や4点法という方法もあります。)
(6点のうちいちばん深い1点のみ記録していく場合や4点法という方法もあります。)
この調子で全ての歯のポケット検査値を測定するとこんな感じになります。
(1点法検査表)
(1点法検査表)
ポケットの底までの深さは、骨の吸収具合によって異なるので、同じ歯の6点が同じ値を示すということにはなりません。つまり、ポケット検査とは、骨の吸収具合を調べる検査なのです。
検査値から読む歯周病の定義とは?
この中に一か所でも4mm以上のポケット値があれば
歯周病という診断となります。
歯周病という診断となります。
同じ歯周病でも、1か所だけ4mmの浅いポケットがある人も歯周病ですし、7mmとか9mmとかとても深いポケットがほとんどの歯にある人も歯周病となります。同じ歯周病という診断でも、程度が人それぞれ、異なりますので治療法や治療期間も程度によって違ってきます。
ポケット検査以外の検査
(一点法)
レントゲン検査で骨の吸収具合を診たり、歯垢染色液でプラークの付着具合を診たり、歯の動揺検査、出血検査などで総合的に診断して歯周病の情報を集めます。
治療回数や期間の目安
当院での治療回数と期間です。あくまでも目安です。
@ 歯肉炎程度 治療回数は2〜4回程度。月1回〜2回のペースで。
A 4mm〜5mmの軽度歯周病 治療回数は3〜5回程度。月1〜2回のペースで。
B 6mm〜7mmの中等度歯周病 治療回数は8〜15回程度。月1〜3回のペースで。
C それ以上は抜歯の可能性も含み、治療回数にも大きくばらつきがあります。
@ 歯肉炎程度 治療回数は2〜4回程度。月1回〜2回のペースで。
A 4mm〜5mmの軽度歯周病 治療回数は3〜5回程度。月1〜2回のペースで。
B 6mm〜7mmの中等度歯周病 治療回数は8〜15回程度。月1〜3回のペースで。
C それ以上は抜歯の可能性も含み、治療回数にも大きくばらつきがあります。
治療法@ 歯ブラシ指導
プラークが付着するから、歯周病になる。逆にいえば、プラークが付着しなければ、歯周病にならない。ということで、歯ブラシ指導が必要です。これをあなどることなかれ。質の高い歯ブラシは、治療の鍵となるのです。磨いているつもりでも磨けていないんです。プラークの落とせない方は、いくら歯科医院で治療しても効果は薄いんです。衛生士さんに診てもらい、指導してもらうのが一番の近道です。
きれいに見えても、染めてみると汚れがわかります。歯ブラシによるプラーク除去をプラークコントロール(PC)といい、プラークコントロールがしっかりできているか評価する記録が、プラークコントロールレコード(PCR)という記録表です。歯垢染色液で染めた歯肉溝付近のチェックポイント(1本の歯につき4つポイント)の染まっている、いないを数えていきます。PCRが0%なら完璧に磨ききれている、100%なら全ての箇所が赤く染まっているということになります。PCRは低い値ほど歯周病になりにくいわけです。
磨けていると思って居ても・・・。
PCRは50%から70%が平均的で40%以下の方はほとんどいません。つまり日ごろの歯ブラシでは半分くらいしかプラークコントロールできていないのです。
PCRは50%から70%が平均的で40%以下の方はほとんどいません。つまり日ごろの歯ブラシでは半分くらいしかプラークコントロールできていないのです。
歯ブラシの技術は癖です。いつも同じところが磨けて、同じところが磨けないので、どこにつくかを自覚することが大切です。歯並びによっては歯間ブラシやタフトブラシ、フロスなど特殊な清掃器具が必要なこともあります。歯科衛生士に指導を何回か受けることをお勧めします。
歯周病の治療にはPCRを20%以下にすることが大切です。やってみるとわかりますが、20%以下ってとても難しいんです。我流の歯ブラシをやめて、指導に従った歯ブラシ方法に変えていきましょう。
歯ブラシが重要なわけ プラークに薬剤は効き目がないからです。
意外だと思われている方も多く、患者さんからもよく質問されるところです。テレビコマーシャルでやっている洗口剤や歯磨き粉(特定の商品の批判ではありません)を含め、全ての薬剤は、プラークに効き目はないと言いきれます。プラークの外の遊離細菌には、効き目はありますが、肝心なプラーク中の細菌には薬剤は届きません。届かないから効かないんです。
プラーク(バイオフィルム)は、細菌たちが歯に付着し続け、外からの薬をほぼ完全に防ぐことができます。
プラークの弱点は柔らかいこと。そこで人間は歯ブラシを開発しました。(フロス、歯間ブラシなどの清掃器具を含む)
歯間ブラシ、フロス、タフトブラシってどうなの?
歯ブラシの補助器具である歯間ブラシ、フロス、タフトブラシ。歯ブラシだけではPCR20%以下というのは困難ですので歯ブラシの届かないところは使うべきでしょう。ですが、我流ではどこにつくのかわかりにくいと思います。歯科衛生士に歯ブラシ指導を受け、染めてもらって必要と思われる場所は使用して下さい。
電動歯ブラシってどうなの?
PCRを20%以下にすることを目標にしている前提でお話します。電動ブラシが効果的かどうか歯医者の間でも見解が分かれます。染めてPCRを取ってみると効果ははっきりと言えるのですが、使い方が人によって個性があるので、効果のある人もいるし、効果のない人もいます。はっきり言えることは、電動ブラシにすればPCRが20%以下になるなんてことは絶対にありません。初めての方はすぐに購入せずに衛生士に当院の電動ブラシを試してからPCRにしてもらうと良いでしょう。
治療法A スケーリング、ポリッシング
プラークが歯石になったら、歯ブラシでは取れません。歯科医院に歯石取り専門の機械がありますので歯石をとりましょう。歯石取りは硬い場合や、ポケットの中に深い場合は痛みや出血を伴います。麻酔をする場合もあります。中等度以上の場合は数カ月かけてゆっくりと取っていく場合もあります。各種検査をしてその方その方に合わせた計画を立てていきます。
除石は歯肉の中のことで見えないところですから、1回できれいにはなりません。深いところほど回数がかかります。
最近ではPMTC(プロフェッショナル・メカニカル・ティース・クリーニング)という言葉も認知されてきていますが、早い話が歯についたプラーク、歯石など害のある付着物を歯科医院で落とす掃除のことです。スケーラーという器具で歯石を除去し、ポリッシャーという器具で歯面をつるつるにしていきます。
完全に歯石やプラークを歯面から除去すればポケット値は下がっていきます。
治療法B 局所薬物送達療法(LDDS)
除石した後に、抗菌剤(ミノサイクリン)をポケットに入れる方法です。ポケット内に長時間残る粘性を高く調整した薬剤を入れていきます。(商品名:ペリオクリン、ぺリオフィール)
治療法C 3DS法(デンタル ドラッグ デリバリー システム)
除石後、患者さんにあったマウスピースを製作して、グルコンサンクロルヘキシジン入りの薬液をいれて、ご家庭で5〜10分つけ置きしていただく方法です。薬液が流れ出ないようにする方法です。
なかなか治らない時は、麻酔下でメスで歯肉を切って剥いで、歯科医師が直接歯面についた歯石を取っていきます。フラップオペといいます。またその際、特殊な膜(メンブレン)を使ったGTR法や特殊なタンパク質が含まれた薬(エムドゲイン)を用いた方法も自費治療になりますが、付加することもできます。フラップオペまでは、保険治療です。ただし、ここに至る方は、ポケットがだいぶ深い方なので、必ず成功することばかりではありません。
治療成功のために治そうと思う気持ち(モチベーション)が大切です
歯周病は、自覚症状に乏しい病気です。歯科医院は治そうと頑張っても、患者さんが治療途中で気持ちがなえてしまっては治るものも治りません。
最後まで一緒に頑張りましょう。
最後まで一緒に頑張りましょう。